デザイン  Road Design Factory
イラスト  H. HAYASHIDA


第一歯 ミガくんの夏休み

作 阿比留千代磨


みーん、ミーン、みん、ミン、みい〜ん。
お盆です。
ミガくんは九州のおばあちゃんのところへ来ています。
あたりを山に囲まれている、いなか〜って感じ。

おばあちゃんちの裏には小川が流れていました。
ミガくんが、ぴょんっとひと跳び、それでわたれるぐらいの幅、深さはひざぐらいでしょうか、
ゆっくりとした流れの、きれいな透き通った小川です。

ミガくんは小川に足を入れました。
ひんやり、とっても冷たくって、おもわず身ぶるいしそう。
あれ、足を何かがつつきます。

「あ〜、おサカナ、おサカナさんがいる」
そうです、メダカでしょうか、小さな魚が5,6,7匹、ううん、もっとたくさん、たくさんの小魚がミガくんの両足をつっついていました。
「くすぐった〜い」

「おばあちゃん、見て、見て、ほら、こ〜んなに」
「バケツがどうかしたのかい?」
「バケツじゃないよ、おサカナさんだよ」
ミガくんは両手に抱えたバケツの中をおばあちゃんに見せました。

「おやまあ、メダカを、こんなにたくさんかい」
バケツの中には、20匹ぐらいのメダカが泳いでいました。
「ネ、すごいでしょ、ぜ〜んぶ、ボクがひとりでとったんだよ」
「うん、うん、すごいねえ、ミガくんは」
ミガくんは得意でした。 そんなミガくんを見ておばあちゃんはやさしく言いました。
「でもね、ミガくん。」
「なあに?」
「こんなちっちゃなバケツの中じゃ、メダカさん、かわいそうじゃないかい?」
「あっ・・・」
「ね、ミガくんだって、こんな中じゃいやじゃないかい、川の中で自由に泳ぎたくないかい」
ミガくんはちょっぴり残念でしたが、メダカを小川にもどすことにしました。  

夕ご飯を食べ終わってからです。おばちゃんは洗面所で、ごしごし洗い物をしていました。
「何してるの、おばあちゃん」
「ふぁ、ふぁ、ふぁ、みつかちゃったねえ、入れぶわ、入れぶわを洗っているんだよ」
「いれぶわ?」
え、何のこと?ミガくんは洗面台をのぞきこみました。
あーっ、おばあちゃんは入れ歯を洗っているのでした。
ミガくんは入れ歯を見るのはこれがはじめて。
「これ、おばあちゃんの歯なの?」
「おやまあ、入れぶわ、知らなかったのかい」
「いれぶわ・・」
「毎晩、こうやって、入れぶわを洗わないとくさくなるからねえ、めんどうだけど仕方がないんだよ」
そういうとおばあちゃんは洗い終えた入れ歯を水の入った器につけました。
「ふ〜ん」
「ミガくんはこんなにならないように、歯を大事にするんだよ」

曲がった腰に手を当て、部屋にもどるおばあちゃんの後すがたを見ながら、ミガくんは考えました。
毎晩、いれぶわを洗うのって大変っ・・。
そうだ、ボクがいる間は洗ってあげようかな。
入れ歯を薬品につけておけば、きれいになることをミガくんは知りません。
だってはじめてみたんですからね、「いれぶわ」を。

ミガくんはいっしょうけんめい歯を磨きだしました。
ミガくんは歯を磨くといい考えが浮かぶんです。


そうだあ。

次の日の朝です。
「おばあちゃん、来て来て、ボクについてきて」
「どうしたんだい」
「いいから、いいから」
ミガくんはおばあちゃんを裏の小川に連れて行きました。

きのう、メダカをにがしてやった小川です。

「おや、おや、ふあ、ふあ、」

なんてことでしょう、おばあちゃんの大切な入れ歯にいたずらするなんて。
ミガくん、ゆるせませんよ!

小川の中には、おもりにつながれたおばあちゃんの入れ歯がありました。
「ミガくんがやったのかい」

「うん、こうすれば毎晩、毎晩、洗わなくてもすむでしょ?ネ、ネ?」
「ほんとだねえ、ミガくん、ありがとうよ」

え、いたずらじゃなかったの・・・。
小川の中では、たくさんのメダカたちが、おばあちゃんの入れ歯をつついていました。
そうです、メダカたちが、おばあちゃんの入れ歯についたよごれを食べて、きれいにしてくれていたのでした。
これでおばあちゃんは入れ歯を川に沈めておくだけで、毎日きれいな入れ歯をすることができるようになりました。
やったね、ミガくん!

でも心配、もしも歯のないうなぎが出てきて、入れ歯を借りていったりしたらどうするんでしょうか・・ネ、ミガくん・・・・・

さて、夏休みも終わり、もう学校は運動会の話がはじまりました。
いったい、どんなミガくんの運動会、それはどんなお話になるんでしょうか。


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